アメリカから帰国しました

2021年2月からボストンに留学していましたが,この2月末で任期を終え帰国しました.

アメリカから日本への引越し

年明け1月頃から,不要な家具などのガレージセール*1を行いました.具体的には,BIC掲示板*2とアパート内の掲示板に不要品を写真を添えてリストアップし,投稿しました.炊飯器,加湿器,ゴミ箱,Wifiルーター,モデムなど,結構色々なものが売れました.

難関は,ベッドとダイニングテーブルの大型家具でした.当初,MIT furniture等のチャリティー団体に寄付しようと思っていたのですが,現在はスタッフ不足で回収をやっていないとどこもreject・・・.幸い,アパート内に引き取ってくれる人が見つかったので,自分たちで運んで無料で処分できました.

私は海外学振でボストンに来ているので,引越しの費用などは自己負担(日々のお金から捻出)です.本など物品は船便の段ボールに詰め,すぐに使う物品はIKEAの巨大なバッグに入れて預け荷物で日本まで運びました.このIKEAバッグ,結構容量もあるし,何より軽くてとても頑丈なので,海外赴任勢にはおすすめです.

アパートの契約時は年収証明やら審査やらで色々と大変でしたが,解約はかなりあっさり.退去通知もメールを書けば良く,当日も鍵を返して終了.デポジットは小切手で日本まで送られてくるそうです.

最初は騒音に悩まされたり,次々にモノがぶっ壊れたりしましたが,2年間過ごしてみると,いい家でした.コロナ禍に契約したので,家賃も相場よりかなり抑えられていましたし.実際,退去通知後には,私が契約していた家賃より$500も上がってマーケットに出されていました.

帰国しての第一印象

ボストンが思った以上に快適だったので,一時帰国は一切しておらず,実に2年ぶりの帰国となりました.

到着してまず思ったのは,照明が白くて明るい!ということ.アメリカの照明は黄色く全体的に暗いんですよね.そして,皆マスクをしているアメリカではコロナは既に終わったことになっているので,向こうのマスク着用率は1~2割でした.あとは,やはり街がキレイ,街中でトイレに困らない,エレベーターが臭くない,とかですかね.やはり日常の快適さは圧倒的に日本が上です.

英語が伸びたかというと?

アメリカ留学にあたって,皆さん気になるのは英語力かと思います.残念ながら,自分では留学を通じて英語力が大して伸びたようには感じられませんでした.留学先が数学科だったので,黙々と作業する日が多く,日常の雑談等が少なかったのと,留学時に既に30歳を超えていたのが原因だったかと思います.一応,今のレベルを書いておくと,

  • プレゼンテーションやニュースは9割方聞き取れる(はっきりした発音で話してくれるので)
  • 一対一の状況なら日常会話もまぁまぁいける
  • ネイティブが2人以上含まれる会話は未だにかなり難しい(大体黙って聞いてるだけになる)

という感じです.まぁ,とりあえず2年間生きていけることは分かったので,今後日本で暮らしてときどき海外に行くのであれば十分という気もしています.

あと,アメリカではもっとヤバい英語力ながら強メンタルで普通に暮らしている人がいっぱいいました.例えば,こっちが英語を喋っているのにスペイン語(?)でゴリ押ししてくる人や,「お前は注文が早すぎる!今やってるからちょっと待て!」と怒鳴ってくるダンキン*3の店員*4などがいました.海外生活で本当に必要なのはメンタルかも・・・

ありがとうボストン

ボストンは,アメリカの都市にしては珍しく車なしで生活でき,かつニューヨークほど大都市すぎない,ちょうどいいサイズの都市でした.冬はちょっと寒いけど,夏のカラッとした快適さは素晴らしいものがありました.初のアメリカ生活で,ここまで快適に過ごせたのはボストンだったからですね.もし,またアメリカに住む場所を選べるなら,次もボストンを選ぶと思います.

MITの前にはチャールズ川が流れているのですが,川辺のベンチでお昼のPB&J*5を食べながらボストンのスカイラインを眺めるのが日課でした.ありがとうボストン.また会う日まで.

*1:まぁ家にガレージはないのですが

*2:ボストン日本人コミュニティ向けの掲示板.20年前に稼働していたようなCGI掲示板がいまだに現役という,インターネット老人会にはうれしい場所.

*3:Dunkin Donuts.ボストニアンの誇り.ボストンはダンキンがスタバより多い唯一の都市らしい.

*4:日本のコンビニ店員も安月給で酷使されているのだから,もっと仕事中に携帯見たり,適当に仕事したり,客を怒鳴りつけて良いと思う

*5:Peanut butter and jellyの略.ピーナツバターとジャムを挟んだサンドイッチ.アメリカ人のソウルフードらしい.

TeXはプログラミング言語(コンピュータ歴史博物館によると)

この記事はTeX & LaTeX Advent Calendar 2022の22日目の記事です.



先日,シリコンバレーにあるコンピュータ歴史博物館に行く機会がありました.

ちょうど順路も中盤に差し掛かったところ,プログラミング言語の系譜を表した展示がありました.

ん・・・?

TeX(とLaTeX)でたー!

なんとFORTRANLISPやCに混じって,TeXLaTeXがちゃんとプログラミング言語として展示してあったのです.

これで,明日から誰もが胸を張ってこう言えることでしょう.TeXプログラミング言語



(オマケ)若いKnuth先生とThe Art of Computer Programmingの映像もありました.

アメリカに来て1年8ヶ月

11月でアメリカに来て1年8ヶ月となり,ボストン滞在も残すところ4ヶ月となりました.

アメリカ国内旅行

去年はコロナも落ち着いていなかったこともあり,11月にニューヨークに行った以外は,あまりアメリカ国内旅行をしていなかったのですが,今年はかなり旅行しました.

6月は出張でピッツバーグへ.ISMP 2015以来.CMUの小さなワークショップだったのですが,過去の国際会議で会った人(発表を覚えてくれていた!)に再会するなど,実にコロナ以来の対面会議ということもあり,モチベーションが上がりました.

7月は二度目のニューヨークへ.今回は家族と自由の女神エンパイアステートビルなどをじっくり巡りました.ニューヨークはボストンから飛行機で1時間ほどなので,MITでもよく週末行ってきたよ〜という人がいます.ちょうど熱波が来てめちゃくちゃ暑かったですが,前回は寒すぎたのでちょうど良かったかも?

8月はワシントンDC.ニューヨークに比べると人ごみも少なく,思ったより快適でした.議事堂見学ツアーやスミソニアン博物館,リンカーン記念堂などを巡りました.こちらもまた熱波が来て暑かったです.屋内観光が多くて助かった・・・

10月はMIT数学科のretreat(遠足?)で,お隣のニューハンプシャー州に.毎年恒例のイベントだったのが,コロナで中止になっており,ついに今年復活したようです.車がないと行けない場所なので,自家用車のない我が家にはありがたい機会でした.紅葉と湖畔が大変綺麗でした.

滞在中の最後の旅行として,12月にカリフォルニアに国内旅行をするつもりです.

共著論文2本採択

本業の話.こちらに来てから始めた共同研究2本がSODA23に採択されました.
arxiv.org
arxiv.org

ここ数年は機械学習の研究を中心にやっていたこともあり,SODAのような理論の組合せ最適化からはしばらく遠ざかっていました.こちらに来て,久々に腰を据えて理論らしい研究に取り組めたのは(リハビリ的な意味で)大変よかったと思います.

このうちShrunk subspaceの方は,MITに来てから始めて実に1年強も取り組んでいたテーマで,これまでで一番時間がかかった研究テーマでした.形にならず苦しい時期が続きましたが,なんとか良い会議に通ってほっとしています.滞在中に現ボスとMITポスドクの方と共著ができてよかったです.

もう1本の代数的アルゴリズムは,上述のshrunk subspaceの研究の中で読んでいた昔の論文の内容が,ちょうど共著者の方が考えていたネタとハマって,割とスムーズに進みました.代数的アルゴリズム修士の頃からお気に入りの話だったので,自分で新しいものを作れたのは感慨深いものがあります.

組合せ最適化と機械学習に関する和書を出版しました

渡米前から2年ほど取り組んでいた,組合せ最適化と機械学習に関する共著の和書が,今年6月に出版されました.

本を出したのは初めての経験だったので,原稿の進め方,出版社の方とのやり取り,校閲など,いろいろと勉強になりました.githubで原稿管理するなど,様々な試行錯誤をしながらなんとか出版できました.実はまだ実物を見たことはないです.

帰国へ向けて

あと4ヶ月弱で帰国となります.最近も,組合せ最適化の共同研究をいくつか進めているので,こっちにいる間に形になればいいなぁという感じです.*1 次は帰国直前の更新になるかもしれませんね.

*1:実は,機械学習の共著もあるのですが,こっちは国際会議査読ガチャに恵まれず不良債権と化しています💀