2010年代の研究生活を振り返る

明けましておめでとうございます🎍

今日から2020年代が始まったわけですが,2010年代が自分にとってどういう時代であったか振り返ってみると,学生として研究を始め研究者としてスタートした時代だったことに気が付きました.

節目として,2010年代の研究生活を振り返ってみたいと思います.

2010~2011年: マトロイドと情報理論

2010年は京大数学系の4年生になり,数学講究の年でした.講究とは,決められたテキストを指導教員のもと輪読形式で1年間読み進めるもので,数学系の卒論研究に相当します.当時の私はOxleyのmatroid theoryを読んでいました.読んでいたのはマトロイドの初歩の初歩の章だけなので,特に難しい数学が登場するわけでもないのですが,理解したつもりでも全然理解できておらず,発表ではずいぶん苦労した記憶があります.

ところで,同じ輪読ではJones―JonesのInformation and Coding Theoryも読んでいました.自分は聞くだけだったので,そのときはふ~んぐらいにしか思っていなかったのですが,修論でさっそく役に立つことになります.

夏の院試で京大数理解析系に合格しました.自分が博士課程進学を決心したのはこの頃です.当時の京大数学系では,院試の時点でD進できるコースとできないコースに分かれており,幸運にもD進可能コースに合格できたので,ともかく最後まで行ってみようというのがありました.また,分野がいわゆる情報系に近く,万一博士課程で失敗してもどこかで食っていけるだろうという目論見もありました.*1

2011年~2013年: 修論とはじめての国際会議

2011年から京大数理解析系の大学院生となり,修士課程に進みました.指導教員からもらったテーマはネットワーク符号化という,情報理論・通信の問題に組合せ最適化を使うというテーマでした.数学講究で聞きかじった情報理論の話が早速役立っているわけです.とは言え,M1は主に既存研究の理解やサーベイに当てられ,これと言った成果が上がったわけではありませんでした.

M2の春にそろそろ何かできないとヤバいと思い,図書館に行って,ボスからもらった論文の結果を改良できないか考えていました.時間をかなり費やした割に小手先の改良しか思いつかず,がっかりしていたところ,ふと,以前うまく行かず諦めていた帰着のアイデアを修正できることに気が付きました.こっちの帰着の方は全然時間をかけていなかったので,全く不思議なのですが,ともかくこれで突破口が開け,何とか修論としてまとめることができました.また,この結果でIPCOという国際会議にも通すことができました.

こうして書くといかにも順調に思えますが,DC1は通らず,セミナー発表は毎回の炎上が恒例で,それなりに落ち込んでいた期間もありました.とは言え,何とか論文が採択されたことは自信になりました.

2013年~2016年: 機械学習との出会いと博士課程

2013年から東大の博士課程に進学しました.DC1が取れなかった私ですが,幸運にもERATOのRAとして雇ってもらえました.そこでもらったテーマが劣モジュラ関数最大化機械学習に応用するもので,これは現在でも私の研究テーマになっています.
tasusu.hatenablog.com

結局,D2からDC2に採択されたので,このRAは1年しかやっていなかったのですが,研究テーマと共同研究者に出会え,博士課程のうちにSODA(計算機科学国際会議),ICML,NIPS(機械学習国際会議)に論文を通すことができました.完全に結果論ですが,DC1に落ちて研究的には良い方向に転んだと思います.

ところで,修士の頃にやっていたネットワーク符号化はどうなったかと言うと,博士の間にフォローアップ論文を1本書いた後は,どう進めたものか悩んでいたのですが,そこで現れた線形代数の問題に当時の助教の先生が興味を示してくれ,いつの間にか海外研究者も巻き込んで国際共著になりました.研究の裾野は広く持っておくことが大事だと学びました.

2016年に無事学位を取得し,運良く所属研究室の助教の後任としてポストを得ることができました.

2016年~現在: ひよっこ研究者,まだまだ先は長い

大学院生は学位取得という大目標が目の前にあるため,学位取得後を考える機会(余裕?)は,ほぼないのではないかと思います(少なくとも私はそうでした).学位を取得し,ひよっこ研究者となった私が感じるのはまだまだ先は長いぞということです

助教になってからも,いくつかの研究プロジェクトを行いましたが,100時間以上費やしたにもかかわらずポシャったものも数多くあります.また,国際会議の最新動向の勉強に時間をかけすぎて,肝心のアウトプットが疎かになってしまった年もありました.成果のアップダウンがある中でも腐らず走り続けるためには,短期に成果が求められる博士課程とは違うスキルが要るように思います.この点は,今なお試行錯誤中といった感じです.

取り留めがない感じになってしまいましたが,2020年代も研究をやっていければ良いなと思います.

*1:当時はまだAIブームではありませんでしたが,結果的にはこの読みは当たっていたことになります