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『「ゼロリスク社会」の罠』を読んだ

「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)

「ゼロリスク社会」の罠 「怖い」が判断を狂わせる (光文社新書)

リスクについて色々書いた本.キーワードは「定性思考から定量思考へ」

定量思考とは

定性思考とは,リスクを「ある・なし」の2値で捉える思考のこと.これに対して定量思考はリスクの量(大きさ)がどれくらいなのか捉える思考を指す.食品の安全性・放射線の影響など,リスクが話題にのぼる今,定性的な議論を抜けだして定量思考をしよう,と筆者は言っている.
確かに,「リスクがある」と言われることはあっても,実際にどの程度のリスクであったのか定量的に語られることはほとんどない.むしろ大騒ぎしたコストの方が大きいことさえあるし,場合によってはもっと大きな別のリスクを呼び寄せることさえある.

事例がいっぱい

とまぁ,震災以後の放射能リスクの議論やニセ科学界隈をウォッチしていた人なら,だいたい聞いたことがある内容が多い.この本の良いところは,事例がたくさん載っているのがいいところだ.

  • BSE問題の「全頭検査」(BSEという小さいリスクに過剰反応して,全頭検査という多額のコストをかけてしまった事例)
  • 中国製冷凍餃子の残留農薬(直前に起きたメタミドホス混入事件にひきずられて,ごくわずかな量の残留農薬に過剰反応した事例)
  • エコナ」の危険性(「発がん可能性物質」に消費者が過剰反応し,花王が製品回収した事例)

などなど.

ゼロリスク思考・定性思考を抜けだそう

最近,学校給食でノロウィルス中毒が発生したが,その経緯を知って驚いた.給食のパンにわずかなコゲがあることに保護者からクレームが来たことから,製パン業者はパンの全数検査をせざるを得なくなり,人がパンに触れる回数が増えてしまい,結果ノロウィルスが混入したというのだ.*1 パンのコゲというごくごく小さなリスクをも許容できず,無理に対策した結果,ノロウィルスというはるかに大きなリスクを呼び込んでしまった事例である.

定性思考は本質を見誤らせ,かえって大きなリスクを招きかねない.自分も定量思考を心がけていくことにした.