「原発ゼロ政策」の社説比較に見る、東京新聞のぶっちぎり感。

今週政府で決定された「2030年代までに原発ゼロ」政策。これに対する各新聞の社説を読んでみたら、東京新聞が異常にぶっ飛んでいた。

社説というか活動家のビラ

問題の社説がこれ→東京新聞:ページが見つかりませんでした(TOKYO Web)

  • タイトルからして「政府のエネルギー方針 もっと早く原発ゼロへ」と、産経が社説でお手紙を出しかねない不穏な感じ。
  • 「私たちには受け入れる用意がある」「私たちは、自信をつけた」など、鼓舞するような文章が目立つ。こうも自信満々に「私たち」を連呼されると、東京新聞の読者は全員が反原発論者なのかという気がしてくる。
  • 反原発の立場からは一定の評価ができそうな政策決定なのだが、プラス評価は一切なし。“政府が決めたんじゃない、私たちが決めたんだ”と言わんばかり。
  • 一番驚いたのが、電気代の上昇や経済への影響についてまったく書かなかったこと。「暑かったことしの夏を乗り切った」から問題なし!という主張だけで、経済に与える影響など全く存在しないかのようだ。

なんというか、このまま国会前のデモのビラに印刷して配れそうな、そんな文章。

脱原発の朝日・毎日と比較してみよう

脱原発の主張である朝日・毎日の社説と比べると、東京新聞の異常っぷりがますます際立って面白い。

朝日新聞新エネルギー戦略―原発ゼロを確かなものにというタイトル。

  • 原発が抱える問題の大きさを多くの人が深刻に受け止めていることを踏まえての決断を、評価したい」と、脱原発に舵を切ったことをひとまずプラス評価。
  • 経済への影響として、高騰する燃料費、電気代値上げに触れ、「一定の電気料金値上げはやむをえないが、節電の余地を生みにくい中小企業などのことを考えれば限界はある」と、経済的なリスクを憂慮する立場にも配慮している。

毎日新聞原発ゼロ政策 実現への覚悟を持とうとのタイトル。

  • 朝日と同じく「従来の原発拡大路線を180度転換させる意義は大きい」「国論を二分した議論に、政府が決着をつけたものとして評価したい」とプラス評価。
  • 「電気料金が高騰すれば、国民経済は大きなダメージを受ける」として、脱原発に伴う経済リスクを最小化する努力が政府に求められるとした。

少なくとも国民の意見をもとに政策決定したことについては、どちらもプラス評価している。また、脱原発に経済的リスクが存在することを認め、脱原発を進めるにあたってはリスク対処が必要だと言っている。国論を二分した議論について述べていることを考えれば、(賛成・反対の立場はあれど)どちらの立場も気にしたバランスのとれた意見だ。

一方で、東京新聞は「原発ゼロ」派以外の国民の存在を考えていない。あたかも「私たち」市民は全員が「原発ゼロ」であって、それ以外の主張をする者は非市民・非国民とでも言いたいかのようだ。

東京新聞を普通の新聞と思ってはいけない

実は、東京新聞の論調によく似た社説を書いた新聞が存在した。しんぶん赤旗である。赤旗の社説はこれ→主張/エネルギー・環境戦略/「すぐゼロに」となぜいえぬ

読んでみると分かるが、運動を鼓舞する表現、プラス評価が全くない点、経済リスクを無視する点が似ている。トップにあるバナーで分かる通り、しんぶん赤旗日本共産党の発行する機関紙である。新聞の形をした日本共産党の宣伝だと思ってよい。となると、これによく似た社説を書いた東京新聞は一体どこの機関紙なのか?

今回の社説比較をやってみて、自分の中での結論はこうだ。東京新聞しんぶん赤旗と同じ、どこかの政治団体の主張が色濃く反映された機関紙だと思うべき。正直、現実的な脱原発議論をするにあたっては、国会前の騒ぎと同じように必要なく邪魔なだけ。