放射線の単位のまとめ

放射能に関して聞く「ベクレル」とか「シーベルト」といった単位に、いったいどういう意味があるのか調べたので、まとめておく。記号などは、この本に準拠した。

放射線防護の基礎

放射線防護の基礎

半減期

半減期とは、放射性物質が崩壊して元の半分の数になるまでの期間をいう。例えば、放射性ヨウ素131の半減期は8日、放射性セシウム137は30年。よく「半減期が途方もなく長い」ことが危険であるように言われるが、半減期の異なる元素がそれぞれ同じ数だけあるときに、単位時間あたり多く放射線を出す(すなわち放射能が強い)のは、半減期が短い方である(次の放射能の強さも参照)。

放射能の強さ--Bq(ベクレル)

「野菜から〇〇ベクレルが検出された」などというときに聞く単位が「Bq(ベクレル)」。放射能の強さを表している。定義は、1秒間に1個の原子が崩壊して放射線を出すような放射能の強さが1Bq。
放射能の強さA(単位はBq)は、現在の放射性元素の個数Nと、半減期Tから次のように計算できる。

この式を見ても、半減期Tと放射能Aは反比例の関係にあることがわかる。逆に、半減期T(すなわち放射性元素の種類)と放射能Aがわかっていれば、放射性元素の個数Nも分かる。

吸収線量--Gy(グレイ)

放射線を受けると、物体はエネルギーを受け取る。このエネルギーによって、細胞やら何やらが破壊される。受け取るエネルギーの量は、物体の質量に比例することが実験で分かっている。そこで、単位質量あたりの受け取ったエネルギーを吸収線量という。吸収線量の単位は「Gy(グレイ)」で、1kgの物体が1Jのエネルギーを受け取ったら、「1Gyの放射線を受けた」という。吸収線量はDで表すらしい。

等価線量--Sv(シーベルト)

放射線による健康被害を考えるときは、単に受け取ったエネルギーを測るGyでは都合が悪い。生体への影響は放射線の種類などによってぜんぜん違うからである。同じ1Gyを浴びた臓器で、片方がピンピンしていて、片方が大変な病気になっていたら比較がしにくい。
そこで、放射線の種類(中性子線の場合は飛んでる中性子のエネルギー)Rに応じて、Rに関する吸収線量DRに重みWRを掛けて足し合わせることを考える。α線はヤバいから20倍して足しておこう・・・とかそんな感じ。こうして次の式で求まるHを、等価線量という。

等価線量の単位は「Sv(シーベルト)」。1kgの物体が放射線を受けて、上の式でHを計算してH=1だったら、「1Svの放射線を受けた」という。当然ながら、途中のDRはGyで計算する。また、重みWR放射線荷重係数という。このWRはどうやって決めるかというと、なんと人が適当な値に決めていて、ICRPという機関が表*1にして勧告している。後になって変わったりする。物理的な観測によって決まるBqやGyとは、趣が違う単位だ。

実効線量--これもSv(シーベルト)

さらにややこしいことに、臓器によって放射線への感受性が異なる。そこで、それぞれの臓器Tへの等価線量HTに、臓器に応じた重みWTを掛けて足し合わせる。こうして求まるのが実効線量Eだ。

こいつの単位もSv。重みWT組織荷重係数と呼ばれ、これもICRPが勧告している*2
なんだかややこしかったけれど、これで一応は放射線の種類と人体の各部位を考慮して、被曝の量が測れるようになった。

預託線量

外部被曝に比べて、内部被曝はさらに計算が複雑だ。外部被曝なら線源から離れればこれ以上の被曝はおこらなくなるが、内部被曝は体内に残る。体内に入った放射性元素は、体内で放射線を出して別の元素になるか、あるいは代謝によって体外に排出される。したがって、ある放射性元素を一定量摂取した場合に、生涯でどれだけの放射線を受けるかは、崩壊のスピードと代謝のスピードの両方を考慮して計算することになる。この積算した放射線量を預託線量という。とくに実効線量で測る場合は、預託実効線量という。
預託実効線量EC食品から受ける放射線量(預託実効線量)の絵にあるように、次のような積分で求められる。

t0は摂取した時刻、τは積分する期間で、子供は70歳まで(τ=70-t0年)、大人は50年(τ=50年)と決められている。は時刻tからt+dtまでに受ける実効線量(線量率と呼ばれる)。
毎回こんな計算をするのは大変なので、放射能[Bq]から預託線量[Sv]を換算する表が用意されている*3
しつこいが、預託線量は生涯の累積被曝を表していることに注意しよう。

*1:[http://ja.wikipedia.org/wiki/%e7%ad%89%e4%be%a1%e7%b7%9a%e9%87%8f:title]

*2:[http://ja.wikipedia.org/wiki/%e7%b7%9a%e9%87%8f%e5%bd%93%e9%87%8f#.E7.B7.9A.E9.87.8F.E5.BD.93.E9.87.8F:title]

*3:[http://www.remnet.jp/lecture/b05_01/4_1.html:title]