数学と社会

図書館に行ったら新入荷の本に面白そうな本があったので早速借りてみた。

現代数理入門

現代数理入門

教科書っぽい見た目だけど、実際にはほぼ読み物で各分野の雰囲気を感じるような本になっている。前書きによると「いかに数学が社会に役立っているかを理解してもらう」のが目的だという。
今までの典型的な数学と社会のかかわりは、数学(→物理学)→工学→社会だとか、数学→化学→社会だとか、別の学問が必ず仲介していて、数学はちょっと後ろで「縁の下の力持ち」的な役割をしていた。数学は各分野で不可欠な役割を演じてはいたけど、それはあくまでツールとしての役割に過ぎなかった。*1
ところが、コンピュータが出現した20世紀後半あたりから、数学が直接に社会の問題を解決する分野が現れ始めた。この本に載っているだけでも、暗号・誤り訂正符号・ネットワーク理論など、様々。他にも、ソフトウェア・オペレーションズリサーチ・アルゴリズム理論など、今では数学が社会に直結した分野がたくさんある。コンピュータが、それまで陰でひっそりと働いていた数学を社会の表舞台に連れ出してくれたおかげでもある。
理学部でずっと純粋数学を勉強してきたような人には、きっと新しい視点で面白い本だと思う。

*1:あんなに大きなジャンボ機が飛んでいるのは航空工学や流体力学がすごいのであって、そこに「いや数学だって道具として役に立っているからすごいんだよ!」と叫びに行くのはちょっと気が引ける